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子どもたち・保護者の方・町民の方へ

 2018年10月末で、智頭病院勤務が満15年:鳥取県立中央病院(中病)からの異動前、智頭病院は小児科医が不在になって2年余が経過していました。不在になった当初、中病を時間外受診した幼児のお母さんが「智頭では子育てができない」と発言されたことが胸に響き、後輩などに智頭病院勤務を促しましたが、応える小児科医を見出せないままでした。結果は、中病の小児科部長と医療局長を任じられていた小生が、片山知事(当時)の“現場主義”に呼応する形で、智頭病院に異動しました。

 中病などでの3次医療・専門医療を約四半世紀担ってきた小生にとって、一次医療、一人小児科医は初体験でした。根幹としたのは「子どもの育ちを支援する医療(成育医療)」であり、今でも一貫しています。つまり、感染症等での受診児に対する保険診療に限定せずで、乳幼児保健、家庭看護に係る具体的な支援などを含めて、成育医療に力点を置いてきました。

 一方、異動当初、お母さん方にボランティアでお集まりいただきニーズをお聞かせいただきました。要約すると、[採血・点滴など痛みを伴う医療や放射線被爆を減らすこと、入院したくない・入院しても早く退院したい]でした。これら4つの願いは、どの時代においても、智頭のみならず日本・世界の子どもたち・保護者に共通することでしょう。

 願いに応えた診療を要約すると、入院例が200例に達した時点での検討結果では、宿泊数1.7泊(胃腸炎系は1.3泊、気管支炎・肺炎系は3.1泊)で再入院皆無、入院例での採血は94.5%が1回以下などでした。

 やがて、いくつかの変遷がありました。智頭病院の医師不足から小生が当直を担う回数が増えたこと(:最近数年間は毎月6~8回で、夜間の宿直が主体)、医師会急患診療所で東部小児科医会の仲間による365日19時~22時までの急患対応が(日曜日・祝日・年末年始は9時~17時も)定着したこと(:小生も参加し、最多回数を担う一人)、智頭町の病児保育が2007年度に始まったこと(:利用率は鳥取県トップで使い易い環境にある結果)、智頭病院の外来では、具体的な家庭看護支援のあり方に係る資料を整え、それらを活用することなどで、入院例が激減しました。かつ、乳幼児の外来点滴も激減しています。

 関連して、抗生物質の使用も激減しています。

 抗生物質については、昨今、西欧先進国、わが国では厚労省・関係学会などが、適正使用について、警告・啓発を繰り返しています。とくに、発達期にある子どもたちに安易に抗生物質を、それも広域に効く高価な抗生物質を用いることは、個々が保有している免疫機構を妨げること、耐性菌を増やすことから(医療費の観点でも)、全く望ましくありません。智頭病院小児科は、古いタイプの安い抗生物質に限定した採用・処方です。

 解熱剤然りです。子どもたちの急な発熱の大半はウイルス感染症による防衛反応(ウイルス血症)であり、単に体温の値ではなく、子どもの様子により、適切に使用することが肝心です。つまり、単に「38.5℃以上になったから解熱剤」は、全く不適切です。安易に解熱剤を使うことも、子どもの免疫機構を妨げ、状況によっては破たんさせることに陥ります。

 幸い、智頭病院小児科を受診される保護者の方は、(以前は「高熱だのに抗生物質がもらえないですか!」と言った認識の方にも出会いましたが、)今日、丁寧・適切に、家庭看護を実践しておられます。結果、(川崎病など、採血・点滴や入院が止むを得ない病状の方を除き、)外来での採血・点滴例や入院例が激減しています。自治医科大学卒の県からの派遣内科医も「当直時に点滴を求める保護者がいない」と、望ましい評価をしておられます。

 転じて、智頭中3年生を対象とした性教育に係る特別授業を受諾し、命・人権を含めた教育講演が12年間継続しています。この中で「“ありがとう”が自らの大脳を優しく育てる」事実について、生徒が積極的・肯定的な感想文を、毎年書いています。素直に育っている証です。外来診療でも、「幸せな人生とするために」作成した資料等を活用し、啓発を続けています。さらに、ホームページ等にも活かし、公開・啓発しています。

 子どもたち、保護者・町民各位のご健勝・ご多幸を祈念しつつ、今後も成育医療を担い続けます。

 

(私事、心身の健康に恵まれ、感謝至極です。)

 解説する図を見る ​

本稿は、智頭病院に異動した2003年11月から満15年となる、2018年10月末を記念しての記載です。

​(小児科外来設置の紹介資料として、また、毎月末に開催される病院運営会議での資料として活用)

2019年11月1日、智頭病院勤務が17年目を迎えました。古希になり、辞する際の基準などを執筆

子どもたちの診療を通じて学び得た内容は、学会発表・依頼講演、智頭町報〔広報ちづ〕や外来診療で活用している多くの資料となっています。

本文を補足する極一部の資料を提示します。

 入院例が200例になった時点で集計し、2007年9月30日に 米子市で開催された 山陰小児科学会で発表した「入院200例の臨床的検討 ~ 一人小児科医の取り組み (第4報)」から採血回数に係る実績です。
 点滴ルート確保に係る針刺入時に、採血も行いますが、1回以下が94.5%でした。

 「痛いことはさせたくない」のお母さん方の願いに応えた実績です。3回の採血例は、鳥取市内からの紹介入院例で、肝機能異常があったため、止むを得ず・・・。

 2006年8月下旬、智頭町から相談を受け、検討を重ね、翌年度当初から始まった病児保育の発熱に係る実績です。

 「夜に発熱した。みてくれる人がいない」と困ったお母さんが職場の服装で受診され、高体温でも受け入れ、実践した成果です。

 病児保育担当の保育士さんと小児科看護師が連携し、病児の支援をし、かつ、病児保育の様子を評価し、家庭看護支援につなげ、急性期を乗り越えることで、入院に至る例が減りました。

 厚労省の基準では「付き添いなしでも入院対応ができる」とは言うものの、乳幼児が家族と離れて一人で入院することは、(専門施設である小児病院等、例外はありますが、)子どもの側からすればネグレクト・心理的虐待環境を強いられることになります。

 お母さん方の「できれば入院したくない」の願いを支援する病児保育の実績です。

 智頭病院に異動した当初は、脱水が進んだ乳幼児の受診が少なからずありました。中には点滴をする際に、末梢静脈の虚脱により血液の逆流がなく、が血管内に針が入っているはずで(閉塞しては困るから)点滴を開始したら、結果的に入っていたと安堵する例もありました。ウイルス性胃腸炎だと病態を診ているので、採血のための追加刺入をせずの例が200例集計時点で約12例ありました。

 近年は、私自身、驚嘆しているのですが、乳幼児のウイルス性胃腸炎で(外来・入院)点滴を必要とする例が皆無に近いのです。

 本文にも書いていますが、保護者が時間外受診時などに「点滴をしてください」の要望も皆無で、内科当直医も高く評価しておられます。

 また、智頭病院異動当初は、「熱が出ているのに抗生物質の処方がないのですか!」と言った要望を話す保護者が少なからずありました。ウイルス血症・防衛反応としての高体温の意義など、作成資料を活かし、丁寧にお話・啓発してきた成果と言えましょうが、近年では、抗生物質の処方を求めるお母さん・保護者はいません。必要な病態の際は、小生が「抗生物質を処方します」と話します。

 勿論、保護者に不安・懸念がある場合は、再診を促して、病態を再評価し、保護者の安心・納得を提得ることになります。これらのことで、子どもの免疫は安定します。

 結果、他要因もあって、入院例は激減しています。勿論、今でも入院が皆無にはなりませんが・・・。

 保険診療に以外に、感染危機管理で必要時は、智頭町の福祉課・教育委員会・学校等と協同して、速やかな対応が必要になります。

 2009年当時の新型インフルエンザ汎流行の際は、国が推進した「地域の保健センターなどでの集団接種」を県内では唯一、全国的も東京都と同等の迅速・適切な対応で実践することが出来ました。

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