アデノウイルス感染症の理解
表
《 アデノウイルス感染症とは・・・ 》
図1・図2にアデノウイルスによる病状を示しました。
アデノウイルスによる感染症は、図1のように病状が多様です。夏季を主として、いわゆる“夏風邪”として、発熱する急性咽頭炎が流行します。(ときに1週間近く続く39℃以上の高熱も!)プール学習に相当する時期に流行があることから(わが国のみ)プール熱との呼称があります。実際には、秋・冬のプール学習をしない季節にも流行ります。つまり、じゃれあい、飛まつ(つば)を飛ばしたり、タオルを共用することでの感染が主体です。近年では水質管理(塩素消毒)がなされているので、プールを介しての感染は減っているはずです。集団生活をしている乳幼児や学童における流行が問題となり易いわけです。が、流行期は、家庭・職場でも要注意です。
感染しても、無症状(不顕性感染)か、軽くて済むのが願いになります。
アデノウイルス感染で、胃腸炎になることもあります。乳幼児における腸重積症の誘因になることや、尿が赤くなる出血性膀胱炎もあります。合併症としては、肺炎などもあります。
※ アデノウイルスには数多くの異なる血清型があり、流行期における病状の違いが出てきます。
《 家庭や集団生活における対策 》
感染様式は、飛まつ感染(セキによる感染・つばを飛ばすことによる感染)や接触感染です。
流行期の対応策は以下の四つ:
〔1〕ノドの保護(こまめに飲水して、のどを潤すこと、こまめなうがい)、
〔2〕(石鹸で汚れを洗い落とし)水道水での手洗いに努めること、
〔3〕タオルの共用をしないこと、
〔4〕プールの前後に、シャワーで十分に洗い流すことです。
発病中の方がおられるご家庭では、とくに〔1~3〕を丁寧に!
咽頭結膜熱の診断がされた際は、学校保健法(第二種伝染病)の規定で出席停止となります。
主要症状が消退した後2日を経過するか、本人の病状・体調により登校許可証を書きます。なお、保育園児の場合も上記に準じて対応します。
アデノウイルス感染による咽頭炎と発熱があり、結膜炎の所見がない場合は、原則的に、一般的な風邪などと同様の扱いになります。本人の体調により、集団生活の再開を決めます。
アデノウイルスによる咽頭炎は、咽頭ぬぐい液での迅速診断が可能ですが、診断しても特効薬がありません。
よって、既述した、ノドの保護、脱水対策が大切になります。[家庭における感染症対策]~[水分・関心・睡眠・安心]を大切にしてください。
'10/10/25改
以上は、智頭病院小児科外来で活用している資料(A5版横両面印刷)を基にして再構成した内容です。
ここでは、さらに図3・4と表を追加しました。
図3は、智頭病院で経験した2回のアデノウイルス感染症の病態比較をお示ししてあります。
戦後間もない頃、白目が赤いと"伝染病"・"流行りやまい(病)"として忌み嫌われた歴史があります。
今日の日本では流行が皆無になりましたが、失明する危険性があったトラコーマがいわば社会的なトラウマとなり、アデノウイルス感染症により、白目(球結膜)が赤い場合も同様に学校伝染病として扱われています。
アデノウイルスのタイプによっては、目が赤くならず、強い咽頭炎所見、持続する高熱を呈することがあります。困り感は、こちらの方が強いのですが、目が赤くならないので、学校伝染病からは外れます。
どちらも全く同じ感染様式、即ち、飛沫・接触感染なのですが・・・。
現に、智頭病院でも2006年(平成18年)には、白目が赤くならず、咽頭炎所見が強く、高熱が持続する病状の例が相次ぎました。
しかも、プール学習が終了した10月に流行したのです。
即ち、咽頭結膜熱を、"プール熱"と呼称するのは、不適切であることの実証です。"プールでの感染(伝染)"ではなく、本質は、飛沫・接触感染です。
'18/ 9/20 記
図 1
図 2
図 3
図 4