鳥取県立鳥取養護学校 創立三十周年記念誌
創立30周年によせて
「福祉の動向と医療の変遷による需要の変化」
第6代学校医 大谷恭一
(H3~15)
医学部卒後2年目の昭和53年度と昭和56年4月から平成15年10月までの通算23年7か月の間、鳥養の子どもたちとの日々がありました。平成3年度からは校医として、子どもたちから学び得たことなどを、入学式・卒業式などでお話する機会に恵まれました。一方、平成元年度からの14年間は、隣接の鳥取療育園の園長を兼務し、連携強化が図られ、より緊密になりました。鳥取療育園も鳥養と同じく昭和50年度に開設されています。
福祉の動向は、施設福祉主体の時代から、ノーマライゼーション理念に基づき、昭和50年代より、徐々に着実に、障害の種別・程度に関わらず、家族が望めば地域生活支援をしていく「地域福祉」の時代へと変革していきました。
東部地域に肢体不自由児の養護学校がないため、かつ、鳥養開設当時に就学猶予となった重度重複の子どもたちが訪問学級に在籍していたこともあり、多様な神経筋疾患・重度重複障害や先天異常の子どもたちの数・割合が増えました。
医療の動向では、長期入院で慢性疾患を診ていた時代から、在宅医療が主体となり、一方で、平成時代には造血幹細胞移植(骨髄移植)の導入などにより治療成績が向上し、結果として多種多様な悪性腫瘍の子どもたちが在籍するようになり、一方では、とくに中学部で、やがて高等部においても、多様な心身症関連の生徒が多くを占めるようになりました。
結果として、今日の在校生の疾病構成となっています。
鳥養の子どもたちから多くを学んだことが、智頭の子どもたちの医療・保健・福祉と教育に役立っていることに感謝しています。
※ 鳥取県立鳥取養護学校 創立三十周年記念誌 54頁に掲載