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子育て、子育ち
こ の 子 ら を 世 の 光 に
- あなたは障害児に学べますか -

《 ユカちゃんは重症心身障害児 》
 5歳になったユカちゃんについて、家族の方々と私たちが知っていた能力は、口の中に入れてもらった食べ物を飲み込むこと、そり返って泣き不快を示してくれること、光に反応していることなど、ごくわずかでした。ユカちゃんは、手足のまひが重度で、はうことや、お座りも出来ず、寝たきりでした。ことばは、理解できず、話せず、そして、頭や体の成長はとてもゆっくりで、驚くほど小さかったのでした。検査で脳がとても小さいことが分かったのですが、大学で調べても原因は不明でした。
 重症心身障害児。重度の運動障害と知能障害が合併した子どもたちをいいます。ユカちゃんも重症心身障害児でした。


《 重症心身障害児は世の光 》
 今ならば、ユカちゃんのような重症の子どもたちに対して、「この子らに、世の光を」と、だれかが言えば、多くの方に同意していただけますね。では、戦後まもない時であったらどうでしょう。当時は、社会に余裕のなかった時代でしたから、受け入れは難しかったでしょう。
 ましてや、「この子らに世の光を」、ではなく、「この子らを世の光に」と、当時どなたかがおっしゃったとしたら、どうお思いになりますか? 
 「この子らに、つまり、重症心身障害児に世の光を」は福祉ですね。これはもち論のこと、さらに《重症心身障害児が世の光》というわけです。この言葉の意味を、あなたはお分かりになりますか。 
 この言葉は私の大好きな言葉で、くじけそうになった時に思い出しては励まされ、甘くなった時には厳しく教えられる、自分自身を謙虚にさせる、そんな大切な言葉です。 
 糸賀一雄先生。「この子らに世の光を、ではなく、この子らを世の光に」という至宝の言葉を残された方で、鳥取県(鳥取東高)出身の人です。 


《 重症心身障害児は命を教えてくれる 》
 先天異常や、仮死などお産に関連した異常、そして脳炎や髄膜炎など様々な病気や事故で、私たちの子どもたちが、あるいは私たち自身が、脳に障害を受けることがあります。「私の子は絶対にそんなことはない」と、言い切ることは出来ないはずです。
 障害を有した子どもたちに接する機会の多い私には、障害のない子は「たまたま恵まれて、元気に育ってくれている」と、思えます。私たち自身、こうして自分の考えを文章で表すことができることを、感謝しています。 
 そして、「重症心身障害児は、彼ら自身の体をもってして、だれにでも障害が起こり得るという事実を、我々に示してくれているんだ」と、私は思っています。 


《 重症心身障害児に学べ 》
 どんな子どもでも、一人一人の可能性は無限と言えます。かりに障害児だったとしてもです。障害とは、「ひとつの能力を獲得するのに、人一倍時間がかかること」と言えるでしょう。 
 もしも、あなたのお子さんに障害がなかったとしたら、私はその事実に感謝することを育児のスタートにしたいな、と考えます。子どもの成長、発達を喜び、感謝しながら育児は進むものだと思います。子どもが元気で育つ過程に感謝することは、よい子に育てるカギだと思っています。

 

(本稿は1987年度に記したものです。)

 

ユカちゃんはご他界されました。ご冥福をお祈りいたします。 合掌

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1987年度には、地元新聞紙に1年間「子育て、子育ち」として、仲間3人と共に、毎週連載記事を依頼執筆していました。本稿はそのシリーズの1項です。

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「障害」の漢字を用いていることについてはコチラに私の考え・願いが記してあります。  2018/ 9/13 記

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